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農薬の深イイ話

2022.07.01

「果樹ではなぜ防除暦が必要なのか」

はじめに
農作物の病害虫を防除するにあたって、各地で作成されている防除暦は非常に重要なものです。しかし、一方では防除暦による散布が、過剰散布につながり、不用な農薬散布を助長していると言う声もあります。今年の「植物防疫」6月号に靑森植物防疫協会の川嶋浩三さんが「果樹ではなぜ防除暦が必要なのか」でその必要性を的確にお書きになっています。長文で難解の部分もありますので要約して紹介いたします。

防除暦とは
果樹栽培の病害虫防除において「病害虫防除暦(以下、防除暦)」は広く活用されている。防除暦に対しては、否定的な意見も多く見受けられる。スケジュール散布が過剰散布、必要でない散布につながると言う指摘がある。結論から言うと防除暦は過剰散布を避けるため、必要のない散布を避けるため、さらには安全な防除を実施するために長い年月をかけて集積された知見と技術の結晶といえる。このようにきめ細やかな日本の防除暦は、実践的な情報を多く含み、生産現場にしっかり根づいている。

防除暦は種類によって差違はあるが次の3点から構成されている。
・時系列のスケジュール散布欄
・散布上の注意点等を示す注意欄や備考欄
・適用表、生育ステージ、換算表等おおむね共通する事項

スケジュール散布は基準散布、基幹散布、基本散布とも呼ばれ(以下、基準散布)ている。基準散布欄は散布時期、対象病害虫、農薬および希釈濃度が示されており、10日から15日間隔で設定されている場合が多い。
果樹が生育するには、発芽、開花、果実肥大、着色、収穫などさまざまなステージがあり、その時期ごとの防除対策が必要である。また主要病害や難防除病害虫では、感染時期、産卵期間に対応するため、一定期間に複数回散布が必要なものも多い。各病害虫の防除適期の幅や農薬の特性等も関わってくるが、基幹散布の多くはほぼこの時期に設定される。
基準散布の対象病害虫は、予防や感染初期の対応が必要な重要病害(リンゴの黒斑病や柑橘類の黒点病等)や発生初期の防除が重要な害虫(柑橘類のアザミウマ類等)で、毎年防除が必要で、時期が限定される病害(ミカンハダニやリンゴはダニの越冬卵、ももの萎縮病等)があげられる。
防除暦は基準散布のほかに状況に対応して臨機的な散布(以下、臨機的散布)も大きな役割を果たしている。年により発生量の変動が大きく必ずしも毎年の防除が必要でなかったり、年によって防除適期が異なる病害虫(夏場のハダニ類等)は基準散布欄でなく、注意欄に防除方法が示されている。
大抵の防除暦は一枚紙で作成されており、壁などに貼ることが前提になっている。これを見るだけで1年の防除体系をイメージすることができる。また、常に防除暦を見ることで適切な防除への意欲も生まれる。さらに、生産物出荷の際はトレーサビリティーの観点から防除履歴が求められることが多い。防除暦に散布月日などを書き込むことができ記録を残すこともできる。

効果的で効率的な防除暦
果樹では高品質の商品を求められておりそのレベルを達成するために、病害虫を効果的に防除しなければならない。対象となる病気と害虫はそれぞれ10種類以上になり、各々の生活史や加害程度なども千差万別である。一方防除資材となる農薬も当然ながら農薬登録、使用基準に準拠しなければならないが、すべてを掲載するわけにはいかない。基礎的な研究による防除効果の確認が必要であり、耐性や抵抗性の発達状況のチェックも求められる。また当該地域での流通状況や入手方法、価格も防除暦に採用する判断材料となる。
このような状況の中で効果的に、効率的に病害虫を防除する体系的な仕組みが防除暦である。生産者はその年の最適な防除計画として作成された防除暦を使用することで、確実に病害虫の防除を実践することが出来る。

地域に根ざした防除暦
地域的な条件を反映させることが重要である。防除暦は地域JAや共同防除組合等生産団体が毎年作成することが多い。温暖化などによって病害虫の種類や生活史の変化や前の年にうまくいかなかった事例を解析し新たなに反映させている。また、使用する農薬も入れ替えが必要で、現場、現状に即した新鮮な防除暦が作られている。

防除暦による安全性の確保
農薬の使用にあたっては、適用される作物、適用病害虫、希釈倍数、使用液量、使用時期、使用回数など使用基準に示された使用方法を遵守しなければならない。防除暦にはこれらが示されており、使用時期や回数が示されていない場合も指示通り使用していれば基準から外れることはない。また使用にあたっては、他作物や近隣の住宅等へのドリフト防止、防除衣、マスク着用など散布者の保護等も呼びかけている。

おわりに
果樹の栽培現場において防除暦は必要不可欠である。防除暦を上手に使うことで、効果的、効率的に,安全・安心な病害虫防除が可能になる。

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