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農薬の深イイ話

2022.05.01

くさいちご

―園児らの啄んでいる草苺―
藪山の尾根に古墳がある。古墳といっても尾根が少し盛り上がっているだけの、案内の立て札がなければ、知らぬ間に通り過ぎてしまうようなものである。それでも史跡であることには間違いなく、時どき草刈りなどが行われて多少の管理はされている。その少し盛り上がった土手に毎年クサイチゴが実る。適当に草が刈られるものだから、クサイチゴにとっては生活しやすいらしく、若い枝にビー玉くらいの大きな実をつける。しかし草刈りされた木は大きく育たないから、実の数は少ない。毎年、赤い玉ができるこの時期その古墳に出かける。ところが思わぬ競争相手に出くわすことがある。街に近いこともあって麓の幼稚園からスズメの集団のように賑やかに園児たちがやって来るのである。そしてたちまち赤い実を見つけると、すでに知っているのだろう、「センセー コレタベテイイ」などと言いながら、土手に群がる。そうなるとまさか子供と競うわけにはゆかず、静かにその場から立ち去らなければならない。

クサイチゴは、スーパーに並んでいる果物の「草本」のいちごと違って、「木本」で背の低い薮を形成する木である。いわゆる木になるイチゴには、このほかにすっぱいナワシロイチゴ、お祭の提灯のように枝に並ぶモミジイチゴ、庭木にもなっていたりする大振りのカジイチゴ、そして珍しく冬に実るフユイチゴなどがあるが、ジャムなどにして食べるイチゴとなるとクサイチゴである。
日向を好み、ほかの草木に覆われてしまうと衰退してしまう。また、自由に木が伸び放題に大きくなってしまうと、沢山に実をつけるものの小粒なものばかりで、摘むには不向きとなる。ということは手入れをされない自然の場所では、何年かするとクサイチゴの姿は消えてしまい、去年大量に摘んだのに、今年は全く採れないなどということがしばしば起こる。普段山を歩きながら、それとなくクサイチゴの生えている場所の様子を調べておかなければならない。

初めてクサイチゴを摘んだのは、もうだいぶ前のことで、電車とバスを乗り継いで行った隣町の公園から登ってゆく山道の斜面であった。背の高い木が切られた明るい斜面で、クサイチゴが山道にそって群落をつくっていた。緑の茂みの中に真っ赤な実が点々と輝き、食べられるものが自然の中にいっぱいあるのに驚喜した。時どき口にも入れながら飽きるほど摘んだ。そのうち一緒の連れ合いが「もう、いい加減にして」と言い出すも、残すのはとてももったいなくて採り続けた。
それというのも、70年以上も前、先の戦争が終わってまだ間もないころ、日本中が貧しい時代で、毎日の食べるものにも事欠き、今では雑草といっている草まで採って食べた、ひもじい経験があったからである。ヨメナやハコベ、ノビル、セリなどは勿論のこと、アカザやスベリビユまで食べた。特にこの時期、甘いものに飢えた子供たちは、クワの実やサクランボなど競って採ったものである。
さて今年はどこの山でクサイチゴを採ろうか。
(鎌倉市在住 山室眞二)

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