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農薬の深イイ話

2022.06.01

サンコウチョウ

―小さくも宇宙歌うや三光鳥―
毎朝の散歩はいつも同じ道を歩いているが、ことしの春は、どうした訳かウグイスの囀りを「ホー ぼけ女」と聞いた。同じウグイスが鳴いていたのか、いつも「ホー ぼけ女」であった。認知症が進んでいる90歳の姉のことが心のどこかにいつも引っかかっているからなのか。普段ならば、「ホー ホケキョウ」と聞こえたはずである。
鳥の声は、その時その時の心の具合によって、また人によって同じ声でも少しずつ違って聞き取られる。「ホー ホケキョウ」は漢字で表せば「ホー 法華経」と書かれ、鳴き声を人の言葉に置きかえたもので「聞きなし」といっている。昔からいろいろな聞きなしがあって、ホトトギスの「特許許可局」、ホオジロの「一筆啓上仕り候」などはよく知られた聞きなしである。
久しぶりに東京銀座へ行ってきた。有名ブランド店があちこちに並んですっかり外国の都市のよう。昔よく通った文具店で探し物をしたが、もう文具店ではなくなっていた。きれいで面白そうなグッズは沢山にあるものの、肝心の使いたい文具がない。ちょうど正午になって、1階の啄木鳥の時計が壁をがたがたと打ち鳴らして正時を告げた。それに気づくと、店内にはサンコウチョウの声が流れていた。もちろん、こんな都会の真ん中にサンコウチョウがいるわけはなく、駅のホームなどで鳴らされている、バックミュージックの類である。
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サンコウチョウはこの時期、東南アジアなどから渡ってくる夏鳥で、日本で子育てをして、秋には南へ帰ってゆく。スズメを少し大きくした程度の小さな鳥だが、オスの尾は体長との比からすると3倍くらいともある。同じ長い尾のヤマドリやキジに比べると、異常なほど長い。体の色は頭部から胸にかけては黒紫色、背面は茶褐色、腹面は白で、眼の周りにはコバルトブルーの大きなリングがあり嘴も同じ青い色をしていて、地味な体の中でとても目立って愛くるしい。しかも囀りが「ツキヒホシ ホイホイホイ」と、一度聴いたら忘れられないとても楽しげな声である。名前の由来は、その「ツキヒホシ」という部分を「月」と「日(陽)」と「星」に聞きなして三つの光、つまり「三光」鳥である。
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M川に沿った林道は、普段からバードウォッチングの場所として知られているが、毎年5月になるとサンコウチョウが渡って来て、ちょっとした銀座通りのような賑わいとなる。同じ時期にやって来るオオルリやホトトギスなどには関心がない。どこから情報を得ているのか、渡ってきた頃とか、営巣し始めた頃とか、抱卵中の頃とか、実にタイミングよく、大きな筒の超望遠レンズを担いだカメラマンたちが大勢やって来る。そしてそうした観客の期待に応えるように、サンコウチョウはM川の上に張り出した杉の枝の股や藤蔓の股などに漏斗状の巣をつくる。もっと林道の奥の人知れずの谷に営巣すればよいのにと思うが、毎年わざわざといっていいくらい、サンコウチョウは人目に付く場所に巣をつくる。杉の木陰で暗くて小さな巣はなかなか見つけにくいのだが、ひとたび見つかれば、それを狙って山道には望遠レンズの方列ができる。可愛らしい青いアイリング、特にオスの長い尾羽の優雅さ、そうした姿がレンズの対象である。ヒナが巣立つまで、林道は銀座通りのように騒がしい毎日となる。(鎌倉市在住 山室眞二)

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